本・雑誌(読みました!)
2013年04月21日
廃墟建築士。 その2
4編ある中で、いちばん読み応えあった「七階闘争」につづき、まあ面白かったのは「図書館」
夜になると、図書館では蔵書が空中を飛び回り、それを夜の開館で一般客に見せる、それを専門とする職業があって・・・とこれもまた、奇想天外な話。
ただ、結びで、こんな記述があり、印象的だった。
・・・・・・・・・
我々傲慢な人間は、時にすべてを意のままに扱えると錯覚をおこしがちだ。だが、自然は人とは違う時間と秩序で超然と存在し、忘れた頃に情け容赦なくすべてを蹂躙し、無に帰する。人間の営みもまた、秩序の中の要素にしか過ぎぬことを知らしめようとするようだ。我々は自然の手の上で弄ばれていることに気付かずに羽目を外しすぎ、いつか掌を返されて慌てふためくのだろう。
・・・・・・・・・
映画ジュラシックパークで、恐竜をよみがえらせて、それを統御しようとして結局破綻したINGEN社を思い出しました。
ちなみにこれが書かれたのは小説すばる2008年10月号のようなので、東日本大震災よりは前ですね。
本のタイトルにもなっている「廃墟建築士」
こちらのほうは、あんまりピンとくるものはなかったなあ。
夜になると、図書館では蔵書が空中を飛び回り、それを夜の開館で一般客に見せる、それを専門とする職業があって・・・とこれもまた、奇想天外な話。
ただ、結びで、こんな記述があり、印象的だった。
・・・・・・・・・
我々傲慢な人間は、時にすべてを意のままに扱えると錯覚をおこしがちだ。だが、自然は人とは違う時間と秩序で超然と存在し、忘れた頃に情け容赦なくすべてを蹂躙し、無に帰する。人間の営みもまた、秩序の中の要素にしか過ぎぬことを知らしめようとするようだ。我々は自然の手の上で弄ばれていることに気付かずに羽目を外しすぎ、いつか掌を返されて慌てふためくのだろう。
・・・・・・・・・
映画ジュラシックパークで、恐竜をよみがえらせて、それを統御しようとして結局破綻したINGEN社を思い出しました。
ちなみにこれが書かれたのは小説すばる2008年10月号のようなので、東日本大震災よりは前ですね。
本のタイトルにもなっている「廃墟建築士」
こちらのほうは、あんまりピンとくるものはなかったなあ。
2013年04月20日
廃墟建築士/三崎亜記。その1
「となり町戦争」「バスジャック」などで有名な三崎亜記さんの小説は、しかしこれが初めて。
タイトルになっている廃墟建築士、の他にも3作品、合計4作品が収められている。
4つとも、読みはじめは、なんのこっちゃ? なんじゃそりゃ、って感覚。
例えば、『七階闘争』の一節には、こうある。
・・・・・・・
世界最初の七階は、地面の上に直接造られていたそうですよ。その後、「第一号七階」は、宗教界や政界の様々な深謀遠慮や駆け引きを経て、造られて三十年後に、初めて六階と八階の間に置かれたんです。
・・・・・・・
ね、なんじゃそりゃ? でしょう。
しかし読み進めるうちに、なんかこれは物語がなにかのメタファーになっているのかもしれないという気もしてきた。
・・・・・・・
それは、特定の誰かではない。だが、確実に「誰か」なのだ。
目の前を通り過ぎる人々の、無意識のうちに築いた透明な壁のような隔絶であり、無関心な対象に対する理解の拒絶であり、1つ1つは小さな個々人の悪意の集積でもある。
・・・・・・・
七階を守ろうと運動を起こす人たちと、七階に住んでいないために無関係な故に無関心な人々。
身近なところではいじめの問題、スケールを広げると南北問題やテロの問題に結び付けて考えられなくもない・・・かもしれない。 そこまで重く感じることはないっちゃあないんだけど。
2013年04月11日
お金を自分のために働かせる方法
金持ち父さんシリーズです。ロバート・キヨサキ【著】
この本は、BIG tomorrowで連載された内容を再編集したもので、今の情勢にうまく合うように構成されている。
最初から一貫している、キャッシュフロークワドラントの右側に居場所を変えよう。ということをここでも言っている。
ますます、ますますですす。ますます、富める者はどんどん豊かに、貧しい者はどんどん貧しく、という世の中になっていく。と述べている。
もちろん、彼は米国でのことを言っているのだけれど、文中のドルを円に、アメリカを日本に置き換えても十分そのまま通じるみたいに思える。
世界は情報時代になっているが、情報だけをいくら持っていても、それをうまく活用する知識がなければなんにもならない。ということを石油にたとえて説明している。
「石油は価値ある資源だ。油田を持てたらと憧れる人は多い。だが、油田をいくつも持っているからといって金持ちになれるわけではない。・・・原油を精製し、燃料を生産するための知識が不可欠だ。燃料ができれば、そこに価値が生まれ、きみを金持ちにしてくれる。だが、原油がなければ燃料が得られないこともまた事実だ」
キャピタルゲインを得るためではなく、キャッシュフローを得るために投資(お金を使う)しなければならないよ。
という。
ようするに、印税、家賃、配当金など、つまりは不労所得ですね。
今の自分にはあんまり関係ないなあ・・・と思った時点でぼくは金持ち父さんには遠いですね・・・。
この本は、BIG tomorrowで連載された内容を再編集したもので、今の情勢にうまく合うように構成されている。
最初から一貫している、キャッシュフロークワドラントの右側に居場所を変えよう。ということをここでも言っている。
ますます、ますますですす。ますます、富める者はどんどん豊かに、貧しい者はどんどん貧しく、という世の中になっていく。と述べている。
もちろん、彼は米国でのことを言っているのだけれど、文中のドルを円に、アメリカを日本に置き換えても十分そのまま通じるみたいに思える。
世界は情報時代になっているが、情報だけをいくら持っていても、それをうまく活用する知識がなければなんにもならない。ということを石油にたとえて説明している。
「石油は価値ある資源だ。油田を持てたらと憧れる人は多い。だが、油田をいくつも持っているからといって金持ちになれるわけではない。・・・原油を精製し、燃料を生産するための知識が不可欠だ。燃料ができれば、そこに価値が生まれ、きみを金持ちにしてくれる。だが、原油がなければ燃料が得られないこともまた事実だ」
キャピタルゲインを得るためではなく、キャッシュフローを得るために投資(お金を使う)しなければならないよ。
という。
ようするに、印税、家賃、配当金など、つまりは不労所得ですね。
今の自分にはあんまり関係ないなあ・・・と思った時点でぼくは金持ち父さんには遠いですね・・・。
2013年04月10日
ロスジェネの逆襲
(池井戸潤・著)
さすがに週刊ダイヤモンドに連載されていただけあって、痛快企業小説ですね。銀行と証券それに新興IT企業がからんだ買収案件。登場人物のキャラ設定もわかりやすくて。
それにしても主人公の半沢部長、理想の上司アンケートがあればベスト3には入るでしょうね。
「サラリーマンは、、いや、サラリーマンだけじゃなくて全ての働く人は、自分を必要とされる場所にいて、そこで活躍するのが一番幸せなんだ。会社の大小なんて関係ない。知名度も。オレたちが追求すべきは看板じゃなく、中味だ」
あと、『銀行員にとって最大の関心事は、人事である』という文もあった。
いくつかの銀行にかかわる小説を読んだけれど(高杉氏とか江上氏とか)、確かにそうかもしれないなと思う。現実の世界でもそうなんでしょうかね。僕は銀行員の経験はないのでわからないけれど。
小説の中で、顧客に
「保身を考える前に、顧客のことを考えていただけませんか。あなたがさっきから口にしているのは自分たちの都合ばかりじゃない。世の中の客商売で、自分たちの都合を言い訳にしているのは銀行だけですよ」
と痛烈なせりふを言わせている場面も。
最後に、印象的だったところをいくつか。
「仕事の質は、人生そのものの質の直結しますから」
「どんな小さな会社でも、自営業でも・・・・、結局のところ、好きな仕事に誇りを持ってやっていられれば、幸せだと思う」
「いつもフェアなわけじゃないかもしれない。だけどたまには努力が報われる。だから、あきらめちゃいけないんだ」
「仕事は客のためにするもんだ。ひいては世の中のためにする。その大原則を忘れたとき、人は自分のためだけに仕事をするようになる。自分のためにした仕事は内向きで、卑屈で、身勝手な都合で醜く歪んでいく。そういう連中が増えれば、当然組織も腐っていく。組織が腐れば、世の中も腐る」
そして、これは実は3部作でもあったのですね。
「オレたちバブル入行組」
「オレたち花のバブル組」
半沢直樹とその同期たちの今まで。読んでみたくなりました。
さすがに週刊ダイヤモンドに連載されていただけあって、痛快企業小説ですね。銀行と証券それに新興IT企業がからんだ買収案件。登場人物のキャラ設定もわかりやすくて。
それにしても主人公の半沢部長、理想の上司アンケートがあればベスト3には入るでしょうね。
「サラリーマンは、、いや、サラリーマンだけじゃなくて全ての働く人は、自分を必要とされる場所にいて、そこで活躍するのが一番幸せなんだ。会社の大小なんて関係ない。知名度も。オレたちが追求すべきは看板じゃなく、中味だ」
あと、『銀行員にとって最大の関心事は、人事である』という文もあった。
いくつかの銀行にかかわる小説を読んだけれど(高杉氏とか江上氏とか)、確かにそうかもしれないなと思う。現実の世界でもそうなんでしょうかね。僕は銀行員の経験はないのでわからないけれど。
小説の中で、顧客に
「保身を考える前に、顧客のことを考えていただけませんか。あなたがさっきから口にしているのは自分たちの都合ばかりじゃない。世の中の客商売で、自分たちの都合を言い訳にしているのは銀行だけですよ」
と痛烈なせりふを言わせている場面も。
最後に、印象的だったところをいくつか。
「仕事の質は、人生そのものの質の直結しますから」
「どんな小さな会社でも、自営業でも・・・・、結局のところ、好きな仕事に誇りを持ってやっていられれば、幸せだと思う」
「いつもフェアなわけじゃないかもしれない。だけどたまには努力が報われる。だから、あきらめちゃいけないんだ」
「仕事は客のためにするもんだ。ひいては世の中のためにする。その大原則を忘れたとき、人は自分のためだけに仕事をするようになる。自分のためにした仕事は内向きで、卑屈で、身勝手な都合で醜く歪んでいく。そういう連中が増えれば、当然組織も腐っていく。組織が腐れば、世の中も腐る」
そして、これは実は3部作でもあったのですね。
「オレたちバブル入行組」
「オレたち花のバブル組」
半沢直樹とその同期たちの今まで。読んでみたくなりました。
2013年04月04日
ミャンマー〜(失われるアジアのふるさと)〜
【著者】乃南アサ さん
2008年に書かれたものなので、まだ軍事政権の時のもの。
といっても現在と比べて人々の暮らしは飛躍的に変わってる
わけでもなさそう。
写真もたくさんあるし、乃南アサさんの文章は読みやすい。
さすが小説家さんというべきか。
ヤンゴンをはじめ、内陸部のバガンやマンダレー、ザガイン、
そしてインレー湖などが出てくる。
ミャンマーは僕自身は行ったことはないけれど、アジアの中
では行ってみたい国のひとつになりました。
日本で活躍中のミャンマー人、黒宮ニイナさんがあまりにも
かわいらしいから、というのもちょっとある。
椎名誠さんがミャンマー紀行文みたいなのを書かれている
のも前に読んだけれど、その時から10年以上(もっとかな)
たってるはず。 でも、風景は同じような感じがした。
ただ、ミャンマービールについてだけ、今回のアサさんは
とてもうまいと褒めていたけれど、椎名さんは、ぬるくて
とても・・・と書いていた。
そこは変わったのかな。
いちばん印象的な内容を抜粋。
私たちの国も、かつてはそういう暮らしをしていた。
豊かでない時代を生きなければならない人々には、
確かに日々の苦労がつきまとい、拭いがたい疲労を
背負い続けなければならない重たさがある。
だがその代わりに、実にささやかなことでも心から
喜び、笑うことを知っていた。
家族は老人から幼児までが肩を寄せ合って助け合い、
互いに情けをかけることを忘れなかった。
今、この国の人たちは、かつての私たちと同じような
日々に加えて、さらに祈りを欠かさず、豊かな来世を
願って僧侶への功徳を行い、そして、言葉も通じない
旅行者にでも、こうして笑顔を向けることが出来ている。
彼らは知らないに違いない。実は、豊かな国で暮らす
私たちがとうに失い、今もさらに忘れ果てようとしている
多くのものを、自分たちがきちんと持ち続けていることも、
それらに包まれて暮らせることの幸福も。
もしかすると、代表的な先進国で生きている私たちなど
よりも、ある意味ではずっと豊かであることも。
2008年に書かれたものなので、まだ軍事政権の時のもの。
といっても現在と比べて人々の暮らしは飛躍的に変わってる
わけでもなさそう。
写真もたくさんあるし、乃南アサさんの文章は読みやすい。
さすが小説家さんというべきか。
ヤンゴンをはじめ、内陸部のバガンやマンダレー、ザガイン、
そしてインレー湖などが出てくる。
ミャンマーは僕自身は行ったことはないけれど、アジアの中
では行ってみたい国のひとつになりました。
日本で活躍中のミャンマー人、黒宮ニイナさんがあまりにも
かわいらしいから、というのもちょっとある。
椎名誠さんがミャンマー紀行文みたいなのを書かれている
のも前に読んだけれど、その時から10年以上(もっとかな)
たってるはず。 でも、風景は同じような感じがした。
ただ、ミャンマービールについてだけ、今回のアサさんは
とてもうまいと褒めていたけれど、椎名さんは、ぬるくて
とても・・・と書いていた。
そこは変わったのかな。
いちばん印象的な内容を抜粋。
私たちの国も、かつてはそういう暮らしをしていた。
豊かでない時代を生きなければならない人々には、
確かに日々の苦労がつきまとい、拭いがたい疲労を
背負い続けなければならない重たさがある。
だがその代わりに、実にささやかなことでも心から
喜び、笑うことを知っていた。
家族は老人から幼児までが肩を寄せ合って助け合い、
互いに情けをかけることを忘れなかった。
今、この国の人たちは、かつての私たちと同じような
日々に加えて、さらに祈りを欠かさず、豊かな来世を
願って僧侶への功徳を行い、そして、言葉も通じない
旅行者にでも、こうして笑顔を向けることが出来ている。
彼らは知らないに違いない。実は、豊かな国で暮らす
私たちがとうに失い、今もさらに忘れ果てようとしている
多くのものを、自分たちがきちんと持ち続けていることも、
それらに包まれて暮らせることの幸福も。
もしかすると、代表的な先進国で生きている私たちなど
よりも、ある意味ではずっと豊かであることも。