2013年04月20日
廃墟建築士/三崎亜記。その1
「となり町戦争」「バスジャック」などで有名な三崎亜記さんの小説は、しかしこれが初めて。
タイトルになっている廃墟建築士、の他にも3作品、合計4作品が収められている。
4つとも、読みはじめは、なんのこっちゃ? なんじゃそりゃ、って感覚。
例えば、『七階闘争』の一節には、こうある。
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世界最初の七階は、地面の上に直接造られていたそうですよ。その後、「第一号七階」は、宗教界や政界の様々な深謀遠慮や駆け引きを経て、造られて三十年後に、初めて六階と八階の間に置かれたんです。
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ね、なんじゃそりゃ? でしょう。
しかし読み進めるうちに、なんかこれは物語がなにかのメタファーになっているのかもしれないという気もしてきた。
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それは、特定の誰かではない。だが、確実に「誰か」なのだ。
目の前を通り過ぎる人々の、無意識のうちに築いた透明な壁のような隔絶であり、無関心な対象に対する理解の拒絶であり、1つ1つは小さな個々人の悪意の集積でもある。
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七階を守ろうと運動を起こす人たちと、七階に住んでいないために無関係な故に無関心な人々。
身近なところではいじめの問題、スケールを広げると南北問題やテロの問題に結び付けて考えられなくもない・・・かもしれない。 そこまで重く感じることはないっちゃあないんだけど。