2013年10月10日
ドミノ倒し
ドミノ倒し
とある地方都市である月影市で、私立探偵業を営む十村(とむら)のもとに、
美人の依頼者がやってきた・・・
ところから物語ははじまる。
殺人事件についての依頼だったのだが、調べるほどに
次々と別の未解決殺人事件へとつながっていく。
貫井さんの作品としては、シリアスではなく、やわらかめ
の、ユーモアを含んだ作品のように展開していく。
でも、最後まで読むとしっかりとミステリーになっていると
いう内容。
貫井ワールドにどっぷりと浸りたいときは乱反射とかを、
軽いタッチで肩肘張らずに読みたいときはこれがおすすめ。
2013年09月24日
野球道/桑田真澄、佐山和夫
野球道 (ちくま新書)
桑田真澄氏と、ノンフィクション作家で日米の野球史に詳しい佐山氏との対談。
桑田氏が現役の時から、そしてアメリカの野球を経験し
引退後に早稲田大学大学院での研究などいかに野球に
ついて思い入れを持って勉強してきたかがわかる。
野球選手はもちろん、アマチュアの指導者も桑田氏の
考え方から学ぶべきところは多い。
桑田氏
勝ち負けはスポーツの楽しみの1つですけど、それは
スポーツの楽しさの唯一の要素じゃないですよね。
スポーツで頂点に立てるのは一人、または
一チームだけなのに多くの人がスポーツを楽しめるのは、
勝利を目指すプロセスそのものに楽しさがあるからです。
佐山氏
私たち日本人は、勝負を争っていても、そこには
それ以上のものがあることを少なくとも認識している
と思うんです。
我々はせっかくそんな良い歴史と国民性を持っている
のだから、ベースボールをいいゲームに高める能力がある。
それが野球の世界的な発展への貢献でしょう。
(第2章 71ページあたり)
指導者自身が怒鳴っているだけじゃなくて、
選手たちにも始終、声を出せと強制しているけれど、
キャッチボールするのにずっと声を出している必要
なんかありませんよ。
キャッチボールは野球の基本中の基本だから、
捕球することや送球することに集中して練習するべきです。
(第3章 89ページあたり)
従来の指導の最大の問題点に練習量のことがあります。
(第3章、90ページあたり)
印象的な箇所としては、
第1章
「アッパースイングでなければ打てない」
「練習は量より質」
第2章
「野球道をスポーツマンシップで再定義する」
「フェアな日本野球」
「いかさま文化を真似てはならない」
第3章の
「三角形の頂点でボールを捕れ、のおかしさ」
「自分もやらない捕り方を教える指導者たち」
「肩を落とさずに投げろ、は間違い」
「イチローが投手として大成しなかった理由」
第5章
「野球の未来のために」
「ここはほとんどすべてがなかなか興味深い」
「ルールは変えてよいもの」
「フランチャイズ制は消滅する」
(・・・これはサッカーと逆をいきますね。)
「野球を歪ませたDH制」
「アマチュアから野球を変えてゆいく」
佐山氏
学生もプロの選手からもっと教わるべきだ
という意見にもたしかに一理ありますけど、
それは身体のメンテナンスについてとか、
怪我をしない方法とか、トレーニング方法についてとか、
本当に必要なことを教えてくれる場合に限ります。
こうすればアンパイアにばれないでうまくいくとか、
そんなことを教えてもらっては困る。
桑田氏
たしかにプロの経験者は、技術ばかり教えて
精神を教えませんね。
精神という土台があった上での技術じゃないとダメですよ。
2013年09月13日
64
64(ロクヨン)
けっこうな長編。本を手に取ったときのずっしり感が快感。
実用書の場合は、あまりずっしり感があると萎えるが、小説
なら快感だったりするんですよねえ。
横山さんの小説は実にひさしぶりに。といっても震度0しか
読んだことはない。記憶が確かならば。
この64は結構あちこち広告出てたし評判よかったので
読みたかったもののひとつ。
舞台となるD県警管内で起き、いまだ犯人逮捕に至っていない
未解決の誘拐殺人事件。
日時がわずか7日間しかなかった昭和64年の間に起きたため、
ロクヨンと呼んでいる。
そのD県警で、刑事部から警務部へ、
しかも記者クラブ担当の広報係という
本人からすれば左遷にも似た部署へ
異動させられた三上。
問題山積みの対記者クラブ、かつての刑事部との関係、
警察OB、同僚、無能な上司に、尊敬すべき元上司、
エリートコースを進む同僚、家族の問題。
そして、D県警にとってのどに刺さった骨のような
未解決事件である64をめぐる、いまさらながらの
警察庁の動きの意味。
それにしても、実際の警察でも、
こんなふうに刑事部と警務部ってのは
あまり仲良くないんでしょうか。
一般企業の、内勤と営業みたいなもの、
いや、それ以上な気がしますが。
かなりのボリュームだけど、読み応えありました。
前半の出だしは、よくある警察内部の対立の話かな、
と思ったけれど、どんどん引き込まれ・・・。
家庭での葛藤、仕事での自分の立ち位置
・・・丁寧で緻密なストーリーです。
例によって、印象的な部分の引用
家庭などなくても生きられるが、組織の中で居場所を失ったら生きていけない。
すべての道を断たれて、そうなって初めて見える道もある
眼前の現実を見つめずして、次の現実を目にすることはできない